2026.10.19
チームリソースの偏りとは、特定のメンバーに業務負荷が集中している状態のことです。偏りを放置すると、プロジェクトの遅延やメンバーの離職につながります。解消の第一歩は、全メンバーのタスクと稼働時間をツールで「可視化」することです。Excelやホワイトボードでの管理には限界があるため、タスク管理と連動したプロジェクト管理ツールの導入が効果的です。本記事では、偏りが生まれる原因と平準化の手順、リックソフトが支援するJiraでのリソース管理を解説します。
チームリソースの偏りを放置すると、「プロジェクトの遅延」「メンバーの離職」「業務の属人化」という3つのリスクが同時に進行します。
偏りは「仕事ができる人」や「頼まれると断れない人」に生まれやすいのが特徴です。周囲からは「あの人に任せておけば安心」と信頼されているように見えるため、問題として認識されにくい傾向があります。しかし実際には、チームの成果が一人の頑張りに支えられた不安定な状態です。その人が異動・退職した瞬間に、チーム全体が機能しなくなる恐れがあります。偏りは個人の問題ではなく、組織全体の経営リスクとして捉える必要があります。
負荷が集中したメンバーは、チーム全体の進行を止めるボトルネックになります。
たとえば、設計レビューや承認を特定の一人が担っている場合、その人の手が空くまで後続の作業はすべて待ちの状態になります。ほかのメンバーに余裕があっても作業を進められず、待ち時間が積み重なってスケジュールが遅れていきます。しかも本人は目の前の作業に追われているため、遅れの兆候を周囲に共有する余裕もありません。結果として、遅延が表面化したときには挽回が難しい段階に入っていることが少なくありません。
長時間労働や強いプレッシャーが続くと、メンバーは心身ともに疲弊し、休職や退職に至ることがあります。
このように燃え尽きたような状態は「バーンアウト」と呼ばれます。偏りの対象になりやすいのは、責任感が強く周囲から頼られる人です。そうした人ほど「自分がやらなければ」と無理を重ね、限界まで不調を表に出さない傾向があります。中心メンバーが離脱すると、残ったメンバーに負荷が移り、次の離職を招く悪循環も起こりえます。採用や育成にかかるコストを考えても、損失は小さくありません。
特定の人にしかできない仕事が増えると、本人が不在のときに業務が回らなくなります。
これが「属人化」と呼ばれる状態です。作業の手順や判断の基準が本人の頭の中にしかないため、周囲はフォローもチェックもできません。その結果、ミスに気づくのが遅れたり、品質にばらつきが出たりします。ノウハウが外から見えない状態は「ブラックボックス化」とも呼ばれ、引き継ぎや後輩育成の大きな妨げになります。
▷属人化の原因と解消方法については「業務の属人化とは? 懸念されるリスクや属人化の解消・防止方法を解説」で詳しく解説しています。
リソースが偏る根本的な原因は、メンバーの「業務量」と「スキル」が見えないまま、仕事の割り振りが行われていることにあります。
多くのチームでは、タスク管理とリソース管理が別々に行われています。日々のタスクはチャットや個人のメモで管理され、工数はExcelの表に月末にまとめて入力する、といった運用です。この状態では、マネージャーが最新の負荷状況を把握できません。また、忙しさを自分から言い出しにくい職場の雰囲気も、偏りを見えにくくする要因です。偏りは個人の働き方の問題ではなく、管理の仕組みの問題として捉えることが大切です。
偏りの最大の原因は、マネージャーが各メンバーの負荷を把握しないまま、「感覚」で仕事を振ってしまうことです。
個人が抱えているタスクや案件の量は、本人以外からは見えにくいものです。「最近は落ち着いていそうだ」という印象で依頼をしたら、実は複数の案件の締め切りが重なっていた、というケースは珍しくありません。特に複数のプロジェクトを兼務しているメンバーは、それぞれの責任者が別々に仕事を依頼するため、全体の負荷を誰も把握していない状態に陥りがちです。
メンバーのスキルが整理されていないと、難しい仕事ほど「いつもの優秀な人」に集まってしまいます。
誰がどの業務をどのレベルでこなせるかを一覧にしたものを「スキルマップ」と呼びます。スキルマップがないと、マネージャーはほかのメンバーに任せた場合のリスクを判断できません。その結果、失敗を避けたい気持ちから、無意識に実績のある人へ仕事を頼み続けます。任された人の経験はさらに増え、ほかのメンバーは経験を積む機会を失うため、偏りは時間とともに拡大していきます。
リソースの偏りは、「洗い出し」「可視化」「再配分」「振り返り」の4つの手順で解消できます。
業務負荷をメンバー間でならし、特定の人に偏らないようにすることを「平準化」と呼びます。平準化は一度の作業で完了するものではありません。現状を正しく把握し、配分を見直し、その結果を確認するというサイクルを続けることで、偏りの起きにくいチームに近づいていきます。以下で各手順を詳しく解説します。
まずは、チーム全員が抱えているすべてのタスクを書き出し、それぞれにかかる工数を見積もります。
工数とは、作業にかかる時間や人手の量のことです。ここで大切なのは、大きな案件だけでなく、問い合わせ対応や会議の準備、定例報告といった細かな業務も漏れなく含めることです。こうした「見えない仕事」が負荷の大部分を占めていることも珍しくありません。見積もりは最初から正確である必要はなく、「半日」「2時間」程度の粒度で十分です。
次に、「誰が・いつ・何のタスクで・何時間埋まっているか」が一目でわかる状態をつくります。
Excelでも一覧表は作れますが、メンバーが増えると更新の手間が大きくなり、情報がすぐに古くなってしまいます。そこで、全員のタイムラインをガントチャートなどで表示できるツールを活用しましょう。ガントチャートとは、タスクの期間を横棒で表した工程表のことです。担当者ごとの予定が重なっている期間がグラフで示されるため、負荷の集中を直感的に把握できます。脱Excelは、可視化を「続けられる仕組み」にするための重要な一歩です。
可視化したデータをもとに、負荷が高いメンバーから余裕のあるメンバーへタスクを移します。
キャパシティとは、一人のメンバーが一定期間に対応できる作業量の上限です。再配分のときは、単に空いている人へ渡すだけでなく、成長してほしいメンバーに経験を積ませる機会としても活用しましょう。スキルマップを参照すれば、任せられる業務と、サポートが必要な業務を判断しやすくなります。移す際は、手順やこれまでの経緯をあわせて共有することが大切です。
平準化は一度で終わらせず、定期的な振り返りで配分を見直し続けることが重要です。
参考になるのが、アジャイル開発の進め方です。アジャイル開発では、1〜4週間程度の短い期間(スプリント)ごとに計画と振り返りを繰り返します。同じように、定期的に計画した工数と実際にかかった工数(予実)を比べ、ずれが大きい作業や負荷が戻りつつあるメンバーを確認します。見積もりの精度も回を重ねるごとに上がっていきます。
▷チーム内での情報共有の仕組みづくりについては「ナレッジ管理ツールとは?選び方・比較のポイントから導入メリットまで解説」も参考にしてください。
リソースの偏りを根本から解消するには、タスク管理とリソース管理が一つにつながった「統合されたツール」が欠かせません。
タスクはチャットで、工数はExcelでと管理先が分かれていると、二重入力の手間が生まれ、どちらかの情報が必ず古くなります。これでは、可視化に取り組んでも正しい判断ができません。そこでおすすめしたいのが、アトラシアン社のプロジェクト管理ツール「Jira(ジラ)」です。Jiraは世界中の企業で使われている、プロジェクト管理・タスク管理の定番ツールです。
Jiraは、拡張アプリ(アドオン)を組み合わせることで、チームの業務に合わせた管理環境を柔軟に構築できます。リックソフトはアトラシアン製品の導入実績が豊富なパートナーとして、ライセンスの提供から環境構築、運用定着までを一貫して支援しています。
Jiraでは、現場が日々更新するタスク情報が、そのままリソース状況として集計されます。
Jiraではタスクを「チケット(課題)」として登録し、担当者、期日、見積もり時間などを設定します。メンバーが作業の進み具合に合わせてチケットを更新すれば、その内容がチーム全体の負荷状況に反映されます。管理のためだけの入力作業が増えないため、現場の負担を抑えながら、常に最新の稼働状況を把握できます。
さらに、リックソフトが開発する「WBS Gantt-Chart for Jira」を使えば、Jiraのチケットをガントチャート形式で表示できます。担当者ごとの作業量を確認しながら計画を立てられるため、特定のメンバーへの割り当て過多を事前に防げます。
Tempo社のJiraアプリ「Capacity Planner(旧Tempo Planner)」を組み合わせると、メンバーごとの負荷の過不足を直感的に把握できます。
Capacity Plannerは、チーム全体のキャパシティに対して、各メンバーにどれだけの作業が割り当てられているかを可視化するアプリです。休日や勤務時間もあらかじめ設定できるため、実際に働ける時間を前提にした計画が立てられます。割り当てが上限を超えたメンバーは色分けで表示されるため、会議の場でも偏りを一目で共有できます。見積もりと実績の比較もできるため、手順4で紹介した振り返りにも役立ちます。

リソース管理の改善に取り組むと、多くのマネージャーが「任せる不安」と「ツールの定着」という2つの壁にぶつかります。ここでは、実務でよく寄せられる疑問にお答えします。
A:一時的に品質が下がるリスクはありますが、育成の機会として計画的に任せれば、長期的にはチーム全体の力が底上げされます。
ポイントは、経験のあるメンバーによるレビューの工数をあらかじめ確保しておくことです。実際の業務を通じて教える「OJT」として位置づければ、品質を保ちながら経験を積ませることができます。任せられる人が増えるほど、特定の人に頼る状態から抜け出せ、属人化の解消と業務の平準化が進みます。
A:入力してくれない理由は、入力作業が負担になっているか、可視化が「監視」だと受け取られているケースがほとんどです。
管理ツールが複数に分かれていると、入力の手間が増え、更新が後回しになりがちです。まずはJiraのようにタスク管理と工数管理を一本化し、日々の作業の延長で入力が済む環境を整えましょう。あわせて、可視化の目的は個人の評価ではなく、無理な負荷からメンバーを守るためだと丁寧に伝えることが大切です。
リソースの可視化は、一部のメンバーの犠牲を防ぎ、チーム全体の力を最大限に引き出すための土台です。
チームリソースの偏りは、遅延・離職・属人化という大きなリスクにつながります。その原因は、業務量とスキルが見えないまま仕事が割り振られる仕組みにあります。タスクの洗い出しから可視化、再配分、振り返りまでを継続し、偏りの起きにくいチームを目指しましょう。リックソフトでは、Jiraを中心に、貴社に最適なツール選定から導入・定着までを支援しています。リソース管理にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。